働きすぎをなくし、人間を大切にする経済への処方箋 〜 ishtarist著『人権の経済システムへ』

エキタス京都の総選挙振り返り企画の際に購入した、ishtarist著『人権の経済システムへーーサビ残ゼロ・最賃アップ・消費税3%が開く新しい社会』を読んだ。書籍の売り上げによる収入の半分は、最低賃金引き上げをめざすエキタス京都の活動費になるとのこと。

まず、経済政策の転換という主張を出版物にして、その売り上げを実際に社会を変える運動の費用にあてるという試みに拍手を送りたい。自らの主張や活動を市民の皆さんに知らせ広げることと、そのことを通じて自分たちの活動費をつくっていくという考え方は、日本共産党の「しんぶん赤旗」のシステムと基本的には同じだが、情報技術の発達によって、個人であっても出版物をつくり、インターネットを通じて売ることができるようになった。こうした試みが広がって、日本の民主主義が下からつくられるようになればいいなと思う。

働けば働くほど労働生産性が下がる「パラドクス」

「最低賃金を上げる」というエキタスの掲げる中心スローガンと同時に、あるいはそれ以上に、長時間労働とサービス残業の問題点が掘り下げられていることに注目した。

日本の労働生産性が下がってきていると言われているが、著者は、低迷する消費と、長すぎる労働時間こそ生産性を押し下げている要因であると主張する。働く人の所得が減り、モノが売れない。がんばって労働時間を倍にして売り上げを維持しても、労働生産性は半分になってしまう。日本経済を再生させる処方箋は「効率的に働く」ことではなく、「給与を底上げし、個人消費を増加させる」ことなのだ。

働き方の「二極化」によってブラック企業が台頭

そして、その長時間労働を担っているのは正社員の人たちだ。著者は日本の正社員の約半数がサービス残業を行っており、その被害総額は26.8兆円にのぼると指摘している。

1990年代後半から、いわゆる「終身雇用制度」が崩壊し、一方では「非正規」という低賃金労働者、もう一方では「正規」という長時間労働者がつくられた。いずれも時間給としてみれば「低賃金」であることは共通している。「正規」と「非正規」とを「競争」させ、若者を安い給料で使いつぶすブラック企業が台頭してきた。

このような働き方の「二極化」を、著者は、ピラニアのいる「非正規の川」を選ぶか、クロコダイルのいる「正規の川」を選ぶか、それとも「干上がる」かしか選択肢がないディストピアと表現している。その結果、輸出拡大による好景気にもかかわらず、賃金は低下し、企業には内部留保が積み上げられていっている。

「働き方改革」も「税と社会保障の一体改革」もしてはいけない

この日本経済の停滞を打開する「処方箋」として、安倍政権が持ち出しているのは「働き方改革」の名のもとに労働をいっそう強化する道だ。「時間にしばられない働き方」=サービス残業の合法化、ブラック企業の合法化をねらっている。働く人にとっても日本経済にとっても地獄の道だ。

一方で、民進党がすすめてきた「税と社会保障の一体改革」はどうか。消費の低迷が経済停滞の原因なのに、さらに消費を冷やす増税を行えば、さらにデフレスパイラルが加速することになってしまう。著者は、この増税による「改革」路線を、「三食ろくに食べられない独身派遣社員の口からカップラーメンを取り上げて、将来子どもができたら教育費を無償にしてあげる」というようなものだと痛烈に批判している。

働きすぎをなくし、人間を大切にする改革でこそ経済再生が可能

結論として、著者は、①サービス残業をなくす、②最低賃金を上げる、③消費税を減税するという「改革」を一体に行うことを提案している。消費税の減税は消費を上向かせる景気浮揚策であると同時に、最賃を上げることに対する中小企業支援策として打ち出されている。

この改革の内容のうち「サービス残業をなくす」という課題には、なんの法改正もいらない。いまも「電通が未払い残業代23億円を支給」とのニュースが流れている。もちろん、罰則を強化するなどの対策をとることは必要だが、現に違法行為が行われていることを摘発し、法に則って改善させることはいますぐ可能だ。

ただし、電通の一件も、若い女性の過労自殺という取り返しのつかない犠牲と引き換えになっている。一人の人間の命と引き換えに残業代が支払われるとは、中世の一揆の首謀者が磔になったのと同じではないか。このような事態をくり返させないためにも、安倍政権の労基法改正=「残業代ゼロ法案」という地獄の道は何としてもストップさせなければならない。そして、この地獄の淵からのあがきの努力、一人ひとりの人間の勇気と連帯が、人間を大切にする新しい経済システムをつくっていくことに必ずつながっていくのだ。

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ちさか拓晃

ちさか拓晃

日本共産党・衆議院京都2区(左京区、東山区、山科区)国政委員長、党府委員会常任委員(青年・学生部長)。
1973年生まれ、1991年大阪府立今宮高等学校卒業、1996年京都精華大学美術学部卒業。
左京区修学院在住、家族は妻と一女。

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